自分の中で一際特別な存在である”ハンドメイドバイク”という世界。

工場のラインで作られる多くの量産品のフレームとは異なり、フレームの設計から溶接まで手がける職人さんであるフレームビルダーが”その人専用機のフレーム生み出す”自転車のあり方の1つです。

オーナーが求める機能を紐解いて、ビルダーが蓄えた理論と手癖を添加して創造される多種多様なフレームに魅了され続けているこの十数年です。

MADE BIKE SHOW 2023 つい先日までアメリカはポートランドで行われていたMADE bike showはそんなフレームビルダーらの擂台賽。

世代や国境を超えてこの展示会でぶっカマしてやろうと各地方から海王が集まります。

 

今年のMADEもヤバかった。。。

 

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32インチタイヤが来るのか!?

と思いつつも一過性のもんだろなんて意見も各所から。

さてこれからどうなる32インチ。。。

 

多くの才ある華やかなビルダーが世に出ては数年後には辞めてしまっていることが珍しくないこの世界。

そんな厳しい世界で心血を注いで生み出されるフレームというのは決して安くはないですし、手元にやってくるまでの期間も長いのですがそれでも「この人が作る自転車に乗りたいんだ!」と思わせる途轍もない魔力を持っています。

BTCHNのタイラーやLa Marcheのトムのような気鋭のビルダーも居る中で、シーンの歴史そのものを語る上で欠かせない、いわば伝説のような存在として認知されているビルダーも居ます。

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アメリカのバイクが好きで画像を掘ったことがあるならば、このロブスターのロゴを1度は見たことがあるんではないでしょうか?

“Rock Lobster”

カリフォルニア州はサンタクルズに工房を構えるPaul Sadoff氏(以下ポールさん)は1978年からフレームビルディングをスタート。

フレームビルダーとして50年のキャリアという轍を刻もうとしている今なお、第一線でオーナーの要望に応えカスタムのフレームを作成するマスタービルダーの一人です。

年間100本といういち個人経営のビルダーとしては驚異的な本数のカスタムフレームを手がけ、世界中のサイクリストに提供し続けるリビングレジェンド。甲殻類の王その人です。

 

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“フレームはニーズを満たす為の道具”という思想のもと作られるRock Lobsterのフレームは工芸品のような目に美しい華美な装飾は無くごくシンプルな見た目。

無骨なTIG溶接で生み出されるただただ乗る為の道具として突き詰められた1本は機能美を体現、世界中のレーサーを中心に強く支持されている西海岸の伝説的な人物です。

MADE BIKE SHOW 2024そんなポールさんはフレームビルダーの中でも一際憧れのひとりであったわけで。

ミーハー心全開で昨年のMADEで一緒に肩を組み写真撮影して頂いたのは人生の宝物として胸の奥にしまっている思い出のひとつです。

自分にとってのイチローや松井秀喜のようなスーパースターの内の一人ですが、そんなスーパースターばかりが会場に居る異常空間がMADE bike showなんです。

(みなさんも憧れの人がそこかしこに普通に居る状況を創造してみてください、嬉しいを通り越し吐き気を催すくらいには緊張するのです)

MADE BIKE SHOW 2024SUMMER CX SERIES FINALE Golden Gate Park 2023そんな僕の中のスーパースターたちは個々を印象づける必殺技といえるものを持っています。

それはフレームのいちディティールであったり、代名詞的に想像される車種や哲学のようなものであったり。

Rock Lobsterといえば、いの一番にイメージされるのはシクロクロスバイク。

ポールさんがスポンサードするチームは象徴的なseafoam greenと呼ばれる薄緑色がチームカラー。

僕ら海の向こうのいち自転車乗りにとってその歴史の厚みから畏怖の念すら覚え、それらに乗る人らはハードコアな自転車乗りとして勝手にリスペクトすべき対象としてチェックしています。

(ちなみにこのピラミッドのてっぺんに居るのは2年前に日本で行われたGRINDUROで表彰台独占だったTOP3の内のひとり)

一昨年のアメリカ出張でのGolden Gate parkのCXレースでも数台見かけたRock Lobster。

SUMMER CX SERIES FINALE Golden Gate Park 2023乗ってる人らは屈強なサイクリストばかり。

現にこの青紫フェードのライダーは表彰されるくらい優秀なライダーでした。

MADE BIKE SHOW 2024MADE BIKE SHOW 2024 一昨年の2023年、初回のMADEで出展予定はあったもののポールさんは事故に遭われてしまい欠場。

非常に心待ちにしていたフレームビルダーの一人だったのでその時のガッカリ感はなかなかのもので、ようやっと昨年のMADEで心待ちにしていた対面が出来ました。

小物を用いてブースを作り込み華やかに世界観見せるフレームビルダーも少なくない中で至極シンプル、

机とバイクスタンド1つだけとあまりにも簡素過ぎるこのブースが放つ異様さといったらば。

MADE BIKE SHOW 2024机の上にはこの手書きのメモのみ。

リビングレジェンドにも関わらず飾らないこの感じ、ポールさんの自分の中の勝手なイメージと謎にラフ過ぎる空気感のギャップと緊張で変な気持ちになりながらも肩を組んで写真を撮らせてもらったのです。

はたから見ているとちょっちおっかなそう(失礼)な方だったのですが、意外にフランクでホッとしたのを覚えていて、「私のフレームを作って頂けませんか?」とお伝えしたのがちょうど1年前。

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私ごとになりますが自転車に触れてもう(未だ)十数年経つのですがおかげさまで自転車歴の半分以上はメカニックとして齢を重ね、乗るバイクのジャンルは多岐に渡ってきました。

たくさんの自転車を所有して乗る中で1年のうちに何度か波がやってきては特に集中して乗ってしまうジャンルがあって、それは固定ギアのバイクでした。

特有の”一体感”というのは他のバイクジャンルには無いもので、それはきっと自転車に乗り始めるきっかけになったいちジャンルだったから。というのも非常に大きく関係しているんだとは思います。

自分なりにその時の気分に合わせてコレだ!と何台か手にしてきましたが文句なしの1台というのはなかなか出会わないわけで。

フレームを手にすれば手にするほど自分の好みが具現化すると同時に変化していったりとむしろ思考の深みへズブズブと。

そんなこともあって今の自分に本当の意味でフィットする1台を手に入れたいなぁ、という思いでここ数年モヤモヤとしていたのです。

MADE BIKE SHOW 2024MADE BIKE SHOW 2024

MADE BIKE SHOW 2024そこではじまる、どのビルダーに新たな1台を作ってもらおうか?問題。

ただ単に「作れる」ビルダーはたくさんいるのですが、”長けている”人と”作れる”人とは本質的に全くもって異なるわけで前者のバイクに乗りたいと考えるのがサガでしょう。

シクロクロスはもちろんですがトラックバイクに関しても90年代にオリンピアンが跨っていた背景もあり、Rock Lobsterのそれは実証済みなのです。

(via:Radavist)

そして何の因果か昨年のMADEのRock Lobsterブースには赤いトラックバイクが佇んでいました。

この1978年製のクラシックなトラックバイクはRock Lobsterの屋号でフレーム作製する以前にRouiterという屋号でフレーム作製をしていたときのもの。

当時フレームの設計を間違えてしまったそうで後にそれを適切な設計で作り直すまで戒めとしてご自身の工房で吊るしてあったそうな。

この厳しい世界で真摯にフレーム作りと向き合ってきたPaulさんの軌跡を人知れず見てきたバイクなんだと思うとなんかグッときたんですよね。

この生き証人的1台がきっかけとなり、同色のトラックフレームの作製をお願いしたのです。

*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track

*Rock Lobster* track

レースをするタイプではないのでその旨お伝えして前バイクから定まっているポジションに関してはトレースして頂く形に。

なによりも乗りものとして調子良いというのは言わずもがな。

*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track*Rock Lobster* track一次元的な速さがどうとか、硬さがどうだ、ステアリングがどうのの”点”のみでは表現できない、

自分にしっくりくる”線”の程良さというのは専用機のカスタムフレームを手にした人だけが得られる希少な体験だと思います。

*Rock Lobster* track世間一般的なトラックバイクといえばイメージされるカタチとは少しばかり異なる部分もあるのですが、形状は機能に従います。

世にありふれていない1台だからこそこうしてオーダーする意味があったなと感じています。

西海岸のリビングレジェンドが自分のために作ってくれた1本という事実だけで震えるものがありますが、なによりも”自分専用機”としてしっかりフィット、ニーズを満たしてくれる1本になりました。

 

このバイクに乗り出してからあまり日が経っていませんが全幅の信頼を寄せて、ネクストバイクをまたポールさんに作ってもらおうかなと考えている自分が居ます。

あ、こんなバイクが”必要”かもしれない、、、なんて1台がモヤモヤと浮き上がっている最中でもあるからです。

う〜む。どうしようか。

 

もしあなたがカスタムフレームを必要としているのであれば、まずは自分が何を求めていて”必要な機能”がなんなのか自身に問いかけて具体化することからはじめてみましょう。

それがよく分からなければ是非店頭で直接顔を合わせて、紐解くお手伝いが出来たらなと思っています。

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また今回Paulさんのご好意でソフトグッズをいくつか分けて頂くことが出来たのでご紹介をば。

チームカラーのシーフォームグリーンとボックスロゴが用いられたサイクルキャップソックス。少量ながらご用意することができました。

3パネルのサイクルキャップは薄手で少しシャリ感ある素材、ソックスはお馴染みSOCK GUYの速乾生地です。

昨年のMADEでもRock Lobsterブースで直接買わせてもらったソックス、

自分が購入したのは足裏に「Don’t try it ‘till you’re knocked it.」と甲にツルハシグラフィックでした。作成の度に色々変えているみたい。

ご自身でブログをいくつかお持ちのPaulさんならではの味あるワードチョイス、色々と想像させる余白ある文言もこれまたRock Lobsterの世界観の1つといえるのかなと。

あのロブスターロゴのステッカーもご用意。

西海岸に生息する伝説の甲殻類をあなたの手元に如何でしょうか。

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当初マイバイクとMerchをご紹介して終わる予定だったこのブログ。

いろんな偶然があって当初は予定になかったストックフレームが1本だけ上馬店に着弾しているので最後に紹介をして終わります。

自分のクロモリとは異なるアルミニウム製のトラックフレームです。

昔から自転車好きな方でRock Lobsterといえばこのぶっといパイプを用いたレーシーなアルミフレームを連想する方も多いのかなと。

サイズ感は自分のクロモリフレームと同一で身長170cm前後の方が適合(トップチューブの水平換算で530nm)、一見フレームカラーも同色に見えますが梨地でマットな表面処理になっています。

クロモリより軽量で高剛性なアルミ製はどれだけの乗り味が異なるんだろうか、、、

違いが気になるのでカミナリ落ちた方は組み立て担当させて頂けると嬉しいです。

 

海の向こうのいち日本人の自分からしたら、もはや神話のような存在であるPaul Sadoff氏とRock Lobsterのフレーム、

未だにバイクが手元にあるのが信じられないくらい夢うつつな状態なのですが、もし気になった方は上馬店一周までお声がけ頂けたら嬉しいです。