monstercross (50)
BlackMountainCyclesのmonstercrossフレームにどれくらいの太さのタイヤを履かせられるのかという質問をたまにされます。
公称では最大で50mm幅(=2インチ)のタイヤを取り付けられるこのフレームですが、2.1インチ(=53mm)幅や時には2.25インチ(=57mm) “表記”のタイヤを取り付けたモンスタークロスをSNSで見たから自分のバイクにも履かせることができずはず!
なので取り付けお願いします!なんてお声を頂くことが度々あります。
その際に決まり文句のように僕らメカニックが口にするのは写真という明らかな証拠がありつつも「やってみないと付けられるかわからない」というお返事なのですが、なぜなのかそれは後述します。
Road (53)
一方同じくブランド開始当初からラインナップされているBlackMountainCyclesの象徴的モデルの1つ、Roadフレームについては同じ質問を受けることは少ないです。
基本的には舗装路を走ることに比重が置かれたバイクですし、公称で最大35Cという舗装路走ることにおいては十分なタイヤクリアランスを持つフレームなので、それよりも太いタイヤを取り付けようと企てる方がクロスフレームよりも少ないんだろうなぁと思います。
なんでこんな話をするかというと今ロットからのROADはそれまでのものよりもタイヤクリアランスが少しばかり広がっているからなんです。
それまでのロットは“タイヤとリム、ブレーキキャリパーの組み合わせによっては”35Cをクリアできるという条件付きでした。
デザイン当時とは世情(主にパーツ事情)がかなり変わっているということもあり、今ロットのフレームはタイヤクリアランスを少し広げてくれていました。
ローンチされてからそれなりに時が経って、なんで今更そんなことに触れるのかって?
こないだオンロードビルドしたMod zeroに履かせたULTRA DYNAMICOのcava 39.?Cの乗り心地が素晴らしく、
Roadでもこのタイヤボリュームを体感してみたいな。と思ったからなんですけども。
ウルトラロマンス御大の駆るミドルリーチロードであるCR-1にも同じタイヤがついていることから、
自分のミドルリーチであるRoadでも試してみたいかも、、、なんて思うのは自然な流れで。
BlackMountainCyclesのバイクはどれも”タイヤクリアランス”をキーに設計されているのは、Bluelugで取扱がはじまった当時のインタビューに記されている通り。
クリアランスが広がっているということは、もうそれは試さなきゃいけないという使命感に駆られる(いつもの発作)わけです。
このフレームがデザインされた当初はRivendellデザインのチェッカーフラッグ柄タイヤ、JACK BROWN 33.3…Cに合わせて設計されていました。
Roadフレームが設計された当時の世の中、Mikeさんがこれくらいのタイヤ幅のロードバイクだったらもっと楽しいのにと思っていた32mm幅程度のオンロードタイヤは、当時の世間一般的にはとても少数派。
ジャックブラウンがオンロードでも安心して使用出来る数少ないボリュームタイヤだったそうで、それをベースにした32Cタイヤクリアランスのロードバイクという1台が生み出されたわけです。
当時その辺のサイズ帯のタイヤはツーリング向けに設計された硬くて乗り心地の悪いタイヤばかりだったそうで、このタイヤの先見といったらば。
現代のBluelugで見知ったラインナップのひとつであるRivendellが、ひいてはグラントさんが当時いかに先取りした哲学を持っていたのかがわかる氷山の一角かなと思います。
そしてこの現代においてはレースシーン最前線での成績からそれまでの細いタイヤから、
僕ら日常に馴染む乗り方にもフィットする少し太めのタイヤがベースとなったモダンなバイクが世に溢れ、32mmもしくはそれ以上の太さののしなやかなタイヤがたくさんあります。(写真はUD、cava33.3c)
製造当時としてはタイヤの種類の少なさからある種不遇とも言ってもいい、Roadフレームは皮肉にもリムブレーキが減少する現代になって今まで以上に輝く時代といえます。
JACK BROWNもそうですがこのRoadも同様の先見で、あくまでファンツールであり日常を彩る為の自転車を生み出してきた人たちの感覚が、結果そうでない大衆の人をも巻き込んだスタンダードになったのってロマンがあってワクワクします。
この”太いタイヤ”を起点とする考え方ってSURLYのfatties fit fineにも通ずる哲学、Rivendellにも通ずるところがあって。
僕らが今夢中になっているバイクを生み出してきた世代の先人達がみんな「コレだよコレ!」と思っていたのに、
長らくそうならなかったということはその時々の世の中のトレンドとされていた速度や重量、一次元的な数字が良しとされてきたマインドによっていろんなことが歪められてきた事実の裏付けなんじゃないかと思います。


だいぶ話が逸れましたが、昨今タイヤ同様リムも物理的な幅が広くなっています。
例えば、旧来の28mmのタイヤと現代的な幅の広いリムを組み合わせると、リム横幅に引っ張られるように実測では30mm以上の太さに膨らんじゃうなんてことがままあります。
これは昔の基準であった細めのリムに合わせてタイヤが設計されているので、クラシックなタイヤとモダンな幅広リムと組み合わせた際に当時の想定以上にタイヤが膨らみ、そんなギャップが起きたりします。
continentalの往年の名作オンロードタイヤ、gatorskinとか4seasonとかはこれが起きがちですね。
(最近デザインされたタイヤに関してはワイドなリムが基準に製造されているのでそのギャップが起き辛い)
そしてRoadのようなキャリパーブレーキのバイクの場合は更にブレーキ本体の股上、
天井とタイヤが干渉する可能性がある、という要素も絡んできます。
monstercrossであればミニVブレーキで組んだ際のサイドの渡しになるワイヤー。
そんな不確定要素がいくつか絡むからこそ、僕らはフレームメーカーの言う最大タイヤクリアランスに似寄りのタイヤサイズを履かせる時には「やってみないとわからない」「現物合わせですね」なんてことを決まり文句のように言うのですね。
まとめると
①タイヤの表記上のサイズは実際に膨らませる時の実寸の幅とは異なる
②リムが幅広になればなるほどタイヤは大きく膨らみ易い
③キャリパーブレーキやミニVブレーキの場合、天井部分の高さも気にする必要がある。
最大タイヤクリアランスに近い太いタイヤを履かせる時はこの3点がキモになります。
そしてこの3要素はフルフェンダーを取り付ける時にも留意すべき点なのですが、それは過去のフルフェンダーにまつわるyoutubeを見て頂けたらなと。
はい、ようやくここで本題になります。
Roadに このcava39Cを履かせてみましょう。
リムはPacenti forza classico、リムブレーキ用としては昨今のスタンダードでワイドめなリムに位置します。
クリアランスを見ましょうの前に、今ロットのRoadのクリアランスはリアの方が少しばかり狭めなのでリアでチェックしていきます。
なんでかというと、

このブレーキキャリパー下にフルフェンダー用の縦穴のダボがあります。
これの関係上フロントよりもリアのクリアランスがタイトだからです。

手始めにはじめからついているWTB Exposure32C、実測で32mmほど。
もちろんかなり余裕があります。

そして本題のCAVA 39C、実測で35mmほど。おろ、縦横全然余裕ある!(件のフェンダーダボが分かりづらいのでフラッシュにて)
ただUDは使っていくうちにタイヤサイドがしなやかに”育って”いくので、つけ始めは表記よりも少しばかり細め。
Mod zeroで使っている方のCAVAは育った結果実測は現在38mm、いつかは育ってワイドになるはずなのでそれを加味して40mmほどのタイヤで試してみよう。

ということでGravel King40c、実測も表記通り40mm。
おろ思いの外クリアランスがある。じゃあ40mmまでギリいけるのかな?
と思いきやここで落とし穴。

チェーンステーとタイヤが接触。
実測で40mmとなるとチェーンステーがクリアできない。。。
ここで前述の前提条件が現れます。リムを細いのにしたらどうだろうか。

ぱっと見はわかりませんがリムはオールドなリム幅であるH plus sonのsuper liteにて再トライ。
実測は38mmほどにボリュームダウン。もちろん縦も横も余裕あり。

チェーンステー側もこれでようやくクリアランスが生まれ、車輪が一応は回るようになりました。
ただグイグイ踏む方は車輪がしなってチェーンステーとタイヤがタイトで擦るケースもあるかと思うので、
公称通り、実測35mmのタイヤが最大のタイヤクリアランスと言って良いと思います。

そしてブレーキキャリパーとのクリアランス問題はブレーキキャリパーの天井よりもフェンダーダボの天井の方が低いので、
車輪が回る(=幅38mm未満)のであれば基本的にどのキャリパーブレーキでも使用出来るようになっていました。
いわば条件付き35Cタイヤのクリアが条件なしに大手を振ってクリア出来るようになった!という結論に。
裏技的なタイヤクリアランスの拡大は叶いませんでしたが、それはもうこのRoadの使い方として35Cが必要十分な設計ということ。
時代に即した正当な進化をしてくださったMikeさんに感謝をしつつWTBのExposure 36Cあたりを次回は履かせてみようと思った一コマでした。










