上馬店のタニです。
今日は「ハンドメイドバイク」のことを書きます。
「ハンドメイドバイク」、このブログを読んでいただいている一部の変態の皆様には(失礼)お馴染みなワードかと思いますが、もしかしたら、ここ数年のお客様にとっては馴染みが薄いかもしれない言葉。
「フレームビルダー」という職人に、自分の理想や夢や願望をぶつけて、
身体の採寸や現在乗ってるバイクの採寸を経て、
正真正銘の世界に1台だけのフレームを作ってもらう、という世界。
・・・で、年に一度そのハンドメイドバイクの祭典として開催されたのが去年ポートランドで行われた「MADE」だったわけです。潜入の模様はこちら↓
未見の変態の方は見てくださいね、ぜひお酒でも飲みながら。ブルーラグきっての変態メカニック2トップの副音声でお楽しみください。
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ハンドメイドバイク。
為替の影響、材料・金属の価格高騰によって、10年前よりも僕らがハンドメイドバイクをお店で扱う機会、日本で組む機会は減ってしまいました。(近年ブルーラグに来ていただくようになったお客様に説明すると、現在のCRUSTやRivendellのような位置付けに当時のハンドメイドバイクがありました)
いつの間にか ”ブルーラグの裏メニュー” みたいになっちゃいましたが、僕の中ではこのハンドメイドバイクが、相変わらず輝く一番憧れのものであり、崇高なものであり、自分がどっぷり自転車に恋してしまった大きなファクターでした。
過去自分が受けた衝撃をお客様にも味わってほしいし、知ってほしいし、乗ってほしい自転車でもあります。
(PASS AND STOWのマットさんも出自はハンドメイドフレームビルダー)
ブルーラグ上馬店から何人かのハンドメイドビルダーのバイクをオーダーすることができます。
細々と店頭でオーダーをいただいたお客様やスタッフのバイクの写真も溜まってきたし、やっぱり大好きなので紹介したい。究極なので、乗って欲しい。
今まではブログとかでご紹介しても「皆さん興味持ってくれるかな・・」と足踏みしていましたが、もう吹っ切れて、今後はハンドメイドバイクもご紹介していきます、フンッ!
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今日書くのはFalconer Cyclesのこと。
冒頭写真からちょいちょい出てきてる彼がビルダーのキャメロン=ファルコナー。
大好きなビルダーさんはたくさんいますが、個人的にRick Hunterと並んで世界一格好いいと思っているビルダーさん。
これらは2016年に工房にお邪魔した時の写真。この数年、お客様にもFALCONERをオーダーいただいて、彼の作ったバイクは数台日本を走っています。
個人でやっているビルダーさんはオーダーしてから時間がかかるので(ビルダーさんによりますが、10ヶ月〜1年、場合によってはそれ以上待つことも)完成、到着、開梱の時の感動は相当なものです。
僕が以前オーダーしたバイクが到着した時を状況を写真で残してもらっていました。手書きの「FRAGILE」のダンボール。
この時はオーダーから1年ちょい。到着が嬉しくって嬉しくって
大袈裟でなく本当にこんな気分です。開けるのが勿体無いくらい早く開けたい。そして乗りたい。
心臓バクバクで、開梱します。そしたら、
最高でしょう。こんなの見たら、もっと好きになってしまう。
この世の自分以外の誰よりも自分に合うように作られたバイク。
他の人ではシンクロ率の上がらない、本当の意味の自分専用機。
細部まで舐め回して、ビルダーが仕込んだ仕事を噛み締めます。
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FALCONERはどんなバイクメーカーなのか、彼自身の言葉で僕が好きなのは、
「自転車はまず初めに”道具”であること。乗って傷ができたり、レースしたりウィーリーしたり、酷使されて、そして愛されるツールであると私は信じています。」
バイクは芸術品でも工芸品でもなくて、あくまで使ってなんぼのただの「道具」であること。傷ついたり汚れたりしていくもので、でも、愛おしいものでもあること。Rivにも通ずる僕が好きな自転車の価値感をもつビルダーです。
そして、彼自身めっちゃ乗るの速いし上手いレーサーでもあるのですが↑↑↑、それと並列で「日常で使う」ってことも立派な用途にしてくれるところ。
例えば、「自分は通勤オンリーだしレースもしないし走るのも速くないからハンドメイドは必要ないな・・」なんて方。違います。ハンドメイドだからこそ、是非ビルダーに「週六日以上通勤で酷使するからそれにピッタリなバイクを作ってよ!」ってオーダーすればいいんです。
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僕個人の意見ですがFALCONERは、「こういう形状のものが欲しい!」じゃなくって「こんなことに使う道具が自分には必要だ!」って「用途」を入り口にオーダーをすると、きっと最高なものを作ってくれるビルダーさんだと思います。
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そうして、出来上がったバイクを紹介します。未来「よし、自分も自分専用機を」と、ハンドメイドバイクにご興味をもってくれる方が現れたら嬉しいです。
これはFALCONERに初めて直接会うことができたときにオーダーした自分の思い出のバイク。
サクラメントでのNAHBS(ノースアメリカンハンドメイドバイクショー)に出展はしていなかったけど会場をウロウロしていたキャメロンを見つけ、話しかけ、憧れを伝えて、オーダーしました。(痛いですね俺)
オーダー内容は、
「ロードバイクだけどロードレースには出ない、毎日の通勤、都内の移動に使う」
「TOKYOはほとんどアスファルトだからアスファルトの上で調子の良いバイクがいい。信号も多い」
「BBの規格も、ヘッドセットの規格も、ブレーキも使うハブも全部 ”ふつう”がいい。いつでも治せて手に入る”ふつう”の規格にしてほしい」
この「ふつう」にしてほしい、って伝えたときに「NICE!」って言ってくれたのが印象的でした。上がってきたフレームには「NORMAL ROAD」という名前がつけられていた。
当初はドロップハンドルで組んでいました。無理なくフィットするジオメトリはカスタムならでは。手を下ろしたら自然とハンドルがあって、全てがしっくりくるこの感じ。
僕は変な体型なので(身長に対し手足長めだけど身体硬くてハンドルサドルの落差が少なめ)量産のフレームだとコラムスペーサーが大盛りになったり、落差なくそうと大きめサイズを選ぶとステムが70mmになってしまったり)。自分の体にあったオーダーバイクはバイクのルックスも腑に落ちるのが嬉しい。
そして踏んだらグーンと前に出る加速。よく走る。最高です。
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そして、乗っていく中で、そもそものオーダー通りの用途に沿った様相に変貌していきました。世にあるロードレーサーではできないことができるロードバイク。
フラットバー化でPASS AND STOWラックを。(PASS AND STOWのマットさんとファルコナーは仲良し。マットさんもFALCONERに乗っています)
ハブダイナモがついて、このラックをつけるなら電線はインターナルにしたくなる。
ベルまで付いて(あまり鳴らさないけど)
梅雨時期はフェンダーもついて・・これだけ崩して組んでも、オーダー用途通りなので、乗り心地損なわず。
日常バイクとして愛用しています。逆に休日のライドでは使わないです、仕事に行くとき、上野や浅草など都内のちょい距離のある移動で機動力が必要なときの相棒です。
ちなみに、FALCONERはダウンチューブのロゴはビニールデカールです。リーズナブルなパウダー塗装にカッティングシートがペッと貼ってあるだけ。剥がれたらはればいいじゃん、と。先述の”道具感”に通ずる考え方。
ペイントやロゴなど、ビルダーさんによって思想やキャラクターがバラバラです。(逆に美しい凝ったペイントを信条にしているビルダーさんも多くいます)
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そしてもう1台、先ほどの開梱写真に出てきたバイクを紹介します。
日々の日常用にオーダーした、エンジ色の1号機とは真逆のオーダー。
2号機の用途は休日ライド、遊び用のMTB。
幡ケ谷店のカネヤンと「月齢MTB」と題して中年ダイエットライドをやっているのですが、それを毎月やってるうちに「こりゃあかんこんなバイクが必要だ!」となってオーダーに踏み切りました。
ビルダーさんにはいつも行く里山の話をして、今まで乗っていたバイクの採寸と、不満に感じていた点を伝えるだけ。
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元々サスフォークはあまり好きではないですし、逆にハンドメイドの鉄フォークは大好物で、「ビルダーさんの手仕事なフォークこそオーダーの醍醐味」なんて信条の僕ですが、カネヤン乗るのうまいし速いので、もっと楽に付いていけないかね、とこのバイクに関しては機材に逃げました。
普段乗るバイクは「不便をつぶしていく」組み方が好きですが、
遊びバイクはいかに遊びやすいか、のみを考えます。柄にもなくドロッパーポスト、
シートチューブにインターナル、キャメロンのここの仕事が美しくてお気に入りポイント。
トリガーはPAUL、僕はOURY信者なのでRIVENDELL以外のバイクは大体OURYです。
ステムは最初自分なりに考えがあって50mm、でも今は35mmに変更。ドロッパーポストも125→150mmに変更。写真の状態から変わっています。最初からビルダーに言われたこと鵜呑みにすればよかったです。愚かでした。全部キャメロンが正しかった。
タイヤのクリアランスもビルダーに相談して、27.5×2.8まで入れられるようにお願いしました。
2.4インチで十分かも、と迷っていたのでざっくばらんに質問をぶつけると、それぞれの長所短所を丁寧に教えてくれました。結論、へたっぴはタイヤは太い方が良い笑
(シートクランプ周りのこのディテールも好き。内径の違うパイプを繋いでバテッドさせている?)
オーダー通りこの2号機では街乗りはほぼしません。そういうオーダーなのでその通りのバイクに組みました。
でも逆に、「山も行きたい!でも普段も乗りたい!」って方は、そう伝えればそういうバイクを作ってくれます。ご自身の野望要望をキャメロンにぶつけてみてください。
どんなバイクをデザインしてくれるんだろう?(↓↓↓チューヤンのATBのような感じになるのかな?)
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量産のバイクよりも高価だったり、時間がかかってしまったり、最近はBLACK MOUNTAINにCRUSTと、台湾製でハンドメイドバイクのようなフレームも色々あるので、今現在一概に「ハンドメイドバンザイ!」と大声を出すことが不自然なのはわかっているのですが。それでも大好きなんです。
自分専用機、乗ったらシンクロ率120%、コアにダイレクトエントリーして戻れなくなります。
FALCONER、フルオーダーが真骨頂のビルダーさんですが、ごく稀にストックフレームもお願いしてたりします。上馬にシレっとぶら下がっていることもあるので、ご興味ある方是非お店でお話ししましょう。
最後まで読んでくれてありがとうございます。タニでした。