上馬店のタニです。
今日は少々込み入ったバイクチェック、アメリカンハンドメイドバイクのバイクチェックと、とあるハブにフォーカスします。
皆さんハブダイナモは好きですか?僕は好きです。
これはマイバイクのハブダイナモ。ホイールが回転すると発電して、電線を伝ってライトが点灯する、という仕組みです。ママチャリのアレを想像されるかと思いますが、明るさも転がりの軽さも次元の違う、上位互換だと思ってください。
「帰ろうと思ったら充電してなかった、ピンチ」なんてストレス、バッテリーの呪縛から解放され、ダイナモがないと生きていけない困った身体で余生を生きていくことになります。そのくらい便利。僕は通勤で乗るバイク、夜間もよく乗るデイリーバイクには必ずこのハブダイナモを仕込んでいます、生活必需品。
そして本当は自分は「ハブダイナモ」じゃなくて「ジェネレーター」って呼ぶのが好きです。子供の頃モビルスーツのスペックを見ているときに「ジェネレーター出力」とか「乾燥重量」とかを意味もわからず格好いいと思っていたからです。そんな話はいい。
特にこのドイツSON製のハブダイナモは永くジェネレーターの王様として君臨しています。
他メーカーのジェネレーターに比べ、回転の滑らかさは段違い(他メーカーだと、発電中明らかにホイールの回転が渋くなったり、場合によってはブルブルと回転の抵抗がハンドルにまで伝わってくるものもあります)でカルト的に支持される、世界中のエブリデーバイクや旅バイクの象徴的なハブです。
「Fundelux enamel pins」
そんなアイコンハブを、まんまオマージュでピンズを作っちゃった人がいる、と聞いてめちゃくちゃ共感、このハブはもはや世界共通言語である。なにこれめちゃ可愛い欲しい。
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作ったのは世界中の旅バイクの総本山Bikepacking.comのエディターで、bunyanveloのファウンダーでもあるルーカスさん。すぐにお願いして仕入れたのでコチラからどうぞ。愛用のバイクバッグ、メッセンジャーバッグ、エプロンなどに是非。
(”SON”が”FUN”になってるところ!)
上記SONのジェネレーターを搭載したバイクのバイクチェックに移りますが、まだまだ余談から、まずはこの写真を。
右:ANTマイクさん。左:クリストファー=アイグルハートさん。
それぞれANTとIGLEHEART BIKESのフレームビルダーさん。二人はレジェンドバイクメーカーFAT CITY CYCLES(後のINDEPENDENT FABRICATION、以下IF)の出自であり、それぞれもレジェンドフレームビルダー。
(ブルーラグからオーダーのできるビルダーさんたちでしたが、惜しくもお二人とも去年にビルダー稼業を引退されました)
その昔ブルーラグでもまだハブダイナモの扱いがなかった時から、彼らの作るバイクによくSONのハブダイナモが付いていました。
その当時僕も、「ハブから電線が出てきて電気がつく」なんて興味のカケラもなかったし、自分のバイクにもお客様のオーダーにもハブダイナモって選択肢はありませんでした。そんな中、海の向こうの彼らハンドメイドバイクビルダーさんが作るバイクの多様さが衝撃で、影響を受けまくりました。
ハブダイナモ、フェンダー、キャリア、パニアバッグ・・・彼らの偉人の作るバイクへの憧れが、家系図のように今ブルーラグで組むバイクや取り扱う商品にも受け継がれて、ご先祖様になってると思います。
余談で同じ時にして、現鹿児島店のAZEXY師匠がS&Sカプラー付きのSURLYでランドナー、650BのポータースタイルでHONJOのフェンダー&センタースタンドで組みつけたバイクも衝撃的で、後の僕のバイクの嗜好や今日の”エブリデーバイク”の定義を決定づけたバイクだと思います。
(これです、これ2012年ですよ・・・影響受けまくった)
話脱線しましたが、バイクチェック行きます。上記レジェンドビルダーIGLEHEARTのバイク。
*IGLEHEART* trail poacher
先述のフレームビルダーIGLEHEARTのハンドメイドフレーム。車種は彼の必殺技で集大成の”trail poacher”。言いなればダート+ツーリングバイク、グラベル+ランドナー、モンスタークロス、、今僕らが夢中になってるバイクの要素はとっくの昔にレジェンドは形にしていた。
クリスが引退される少し前、ラッキーにも滑り込みでオーダーができたオーナー。正直めっちゃ羨ましい、、です。自分もマゴマゴしてないでオーダーすればよかった。
本当は電線はフォークに内装にできる工作がしてあるフレームですが、世界一格好いいラック(タニ調べ)でお馴染みのPASS AND STOWを装着ご希望だったので、今回はラックにインターナル配線しました。
(フォーク肩向かって左の穴から電線出せます)そしてこのフォーク形状、FAT CHANCE時代から続く伝統的な5ピースセグメンタルフォーク。ニュルリと光るのヘッドセットはPHILWOODのピアノブラック。
写真には写っていませんが、フォーク先の穴は雨の涙滴が入らないように工夫がしてあったり、ハンドメイドの仕事の奥深さを随所に感じます。たまらんぜ。
BBシェルが大口径T47なのはビルダーからの提案でした。剛性感や乗り味のメリットだけじゃなくって、グロメットで塞いである穴から電線引いて、リアダイナモライトを仕込むこともできるのですが、WHITE INDの30mmアクスルのクランクを使っても無理なくリアダイナモの電線が通せるように、とのこと。レジェンドからの提案、聞くしかないでしょ!とオーナーさん快諾ありがとうございます。
オーナーは輪行遊びツーリングも予定されてたので、最初はフェンダーなしで組みましたが、この穴から出た電線をHONJOフェンダーに穴を開けて裏を通して、これまた世界一美しいリアダイナモライト(タニ調べ)*SON* rear light mudguard mountに繋ぐ、、なんてドリームビルドも想像させます。
ああ憧れのジャバラのロゴよ。たしかAZEXY師匠がこのロゴのTシャツ持ってたはずです(ください)。
KING CAGEのボトルケージは3つともビルダーさんからのギフトでした。レジェンドが勧めるのはやはりレジェンドのハンドメイド、説得力よ。
ステムもフレームと同時にオーダーして作ってもらったもの。首長のスペーサー一体スタックハイトにベルマウントの穴もオーダー。クランプ部とCAPはパラゴン製なのでテーパースペーサーもパラゴンで合わせました。(ベルはブルーラグオリジナル、ブラックいいでしょう??)
幅広ドロップハンドルを高めの位置で、前傾姿勢がきつくならないツーリングポジション。”伝統的なのに新しい規格も受け入れてる”というのがこのフレームにピッタンコなコンセプトだったのでGREPPというオーナーのバーテープのチョイスに痺れました。
個人的には、このトップチューブとシートステーが”ズレ”て縦パイプに繋がっているところがめちゃくちゃ興奮ポイントであります。これ格好いいな。何か理由か理論はあるのかな?熱入れる箇所を分散してる?それともジオメトリー的理由でしょうか。
リアのウィッシュボーンステーの曲げがエッチです。フロントフォークに負けてない存在感。タイヤは説明不要。
ブレーキはダウンチューブインターナルルーチン。こっから入って、
こう出てチェーンステー上をスルリ。
海の向こうの憧れハンドメイドバイクを、オーダーしてもらって組み立てをさせていただける幸せ・・昔はパソコン越しに指加えるだけだった僕の夢がお客さんのバイクを通して叶っていく。役得です。
アメリカンハンドメイドバイク。為替だったり昔と値段感も変わったし、レジェンドビルダーさんたちにも人生があって、引退されたりオーダーを制限されていたり手に入りにくくもなってる。
加えてRivendellやBLACK MOUNTAINやCRUSTみたいに、アメリカ製に引けを取らないアメリカデザイン台湾メイドのバイクも今はたくさんあるので、10年前と今が違うのももちろんわかるのですが、、いつまでも僕の憧れのてっぺん、先っちょで輝き続けています。
IGLEさんのバイクはもうオーダーできませんが(たしか奥様とルーツである南フランスに移住されたとか)他にもオーダーできるビルダーさんのバイク、店頭でしかお勧めしない”とっておき”もたくさんあるので、是非お店でご相談くださいませ。
ーーー鉛筆ーーー
本当は写真に写るもう一人のレジェンドANTのマイクさんに作ってもらったマイバイクのバイクチェックをしようと思いましたが長くなったのでまたにします。つづく。
最後まで読んでくれてありがとうございます。タニでした。