上馬店のタニです。

お客さまとのパーツ決めMTG。ニューバイクを手に入れるまで一番楽しい時間だったりするわけですが、Rivendellのパーツ決めに関しては、皆さん共通して迷ってしまう項目があります。それは「グリップ周り」。

なので今日はRivendellのグリップ周りについて考察(という名の独り言)とグリップカタログを作る気で書いてみます。

ーーー鉛筆ーーー

Rivendellのバイクを組ませていただく際に、ハンドルグリップの選択肢として度々登場する「焼豚巻」というのがあります。
*RIVENDELL* clem smith jr. (52)
こういうのです。

「焼豚巻」なんてのはふざけて僕が言い出した名称で(その方が覚えてもらえるかと思って)正式には「Grant Wrap™️」なんて呼ぶのが良いのかもしれません。以下はグラントさんのバイクのハンドル周り。

その名の通り、Rivendellの創始者であり代表のグラント=ピーターセンがやり出したグリップ方法です。

これ「同じことしたい」とご要望いただくことが増えてきてとっても嬉しいのですが、正直これ以外のグリップ方法も色々あるし「Rivendellは焼豚巻しないといけない」なんてこと全くないです。こんだけ巻いといてなんですが、ぶっちゃけ好き嫌いのあるグリップですし奇抜ですよね。本国Rivendellの若いスタッフが「これはグラントスペシャルだよ笑」とちょっとイジられてたのを思い出します。

そして「タニのとこに持っていくと強制的に焼豚巻にされちゃう」なんて言われてる気がして(誰も言ってない)その誤解を解きたい。むしろ一番少数派な方法であるべきで、あくまで選択肢のうちの一つ、と思うのです。例えば、

本国Rivendellメカニックが組み上げたこのバイクはシンプルに好きな2色のバーテープで仕上げています。本来こっちの巻き方の方がスタンダードであるべき、ですよね。格好いい。焼豚が市民権を得て嬉しいけど、何かバランスがおかしくなってきたな、とも思います(だれが言ってんねん)

なのでRIVENDELLのグリップ周り、もちろん以下だけじゃないけどよく自分が組ませていただく選択肢を図鑑にしてみました。
*RIVENDELL* sam hillborne (51)
*RIVENDELL* miesha’s portuguese tree cork
例えばRivendellが作る上質なコルクのグリップ。シャワっとした優しい質感。こんなものが似合うのもRIVならではですね。この方はハンドルの”立ち漕ぎするとき握る部分”に単色でバーテープを巻きました。
*RIVENDELL* platypus (50)
この方は同じくコルクですがニスを塗ってあります。シャワっと感触はなくなってしまいますが雨や汗に強くなり、多少の補強の意味もあります。またニスが剥げて経年変化が加わると非常に格好いいです。
*RIVENDELL* susie w. longbolts/wolbis slugstone (53)
ESIグリップもよく登場します。究極にシンプルで振動吸収最強、本国で組まれるRivendellに使われることも多いです。バーエンドを付属のプラのものからワインコルクに変えるとRIVの美しいフレームに馴染むかもしれません。
*RIVENDELL* sam hillborne
もちろんOURYやエルゴン、他メーカーのグリップで似合うものも沢山あります。あまりナウでハイテクなものは似合わないと多いますが、こういう伝統ある渋いグリップたちは合う。
*RIVENDELL* joe appaloosa (51)
エルゴンとOURYは本国スタッフジェームス君やWill君がよく選ぶイメージ。

そしてRivendellとは切っても切れないコットンのバーテープ。
*RIVENDELL* susie w. longbolts/wolbis slugstone (50)
焼豚はしないでシンプルに巻くパターン。これもニスを塗ってあります。ニスが剥がれたり日焼けして退色していくとなんとも言えない風合いで格好良くなります。迷ってしまったらコットンバーテープは安いのでおすすめです。

そして焼豚巻。

*RIVENDELL* sam hillborne (54)

手元は多色の焼豚巻、立ち漕ぎ部は単色通常巻きの合わせ技。
*RIVENDELL* gus boots willsen (54)
左右非対称にしたりニスを塗ったらどんな色になるんだろう?って妄想しながら選ぶのも楽しい。いわば焼豚巻Lv.2。

なんでこれがLv.2かと言うと、
*RIVENDELL* gus boots willsen (54)
こんな風に、アクセントカラーの飾りテープは無しで1色だけのバーテープにセイル糸のみで巻くと、意外とシンプルなLv.1な感じになります。

そしてそして、手元も、立ち漕ぎ部も全部ないわゆるな、通称「フルアーマー焼豚」
*RIVENDELL* JOE APPALOOSA (51)
多色のバーテープの上に、グラントさんに教えてもらったヨットのセイル用の糸を補強で自由に巻きます。この糸もニスが重なるとジーンズの金糸みたいな色になって美しい、です。このフルアーマーは焼豚Lv.3と呼称しよう。
*RIVENDELL* gus boots willsen (54)
選ぶ色、何色使うかによって印象も変わるし、新品状態では結構派手ですが馴染んでニスを塗り足して、、なんて繰り返していくともっともっと格好良く、愛着の塊になっていきます。

Rivendellのグリップ選択肢、もちろんこれだけじゃないですが、僕が選ぶものだけでもこんなにいろいろあるんです。なので「Rivendellは気になるけどニスとかコットンとかは嫌や!」なんて方や、シンプルなものが好きな方も、自身のお気に入りになるようお好きなグリップを選んでくださいね。もちろん焼豚も今まで通りご希望でしたら巻きまくります。

で、ここから先は蛇足番外編、少数派、あまりやることのないグリップ方法の考察を書きます。

ーーーペンシルーーー

時を遡ると、

”グラント原理主義者”の僕は当時このグラントさんのバイクの、奇怪で美しいハンドル周りを初めて見た時衝撃で、憧れて、やり方を教えてもらって、練習して、日本でお客様や自分のRivendellのバイクにも同じように巻かせてもらって、、それが焼豚巻きのはじまり。(そして個人的にはアルバトロスより、ボスコやチョコや「四角くてレバーの向こう側を握る回数の多いハンドルバー」に似合うと最近思います)

だがしかし、なんだろう、以下はグラントさんが自らのブログでやり方巻き方をレクチャーしたときの記事のスクショですが、

グラントさんご本人が巻いた「GRANT WRAP™️」から放たれる雰囲気、バイブス・・・なーんか日本で模倣させてもらっている焼豚巻には出せない格好良さ、美しさを感じます。

なんでだろう?この丸みというか角がない感じ↓

最初は「ニスは何を使っているんだろ?」なんてことを思ってしまったんだけど多分そうじゃなくってきっと、僕らはJAPANの国民性なのか几帳面に丁寧にやりすぎていると思います。グラントさんのグリップをよく見てください、意外と適当(失礼)僕ら日本人はセイル糸の巻き方や結び目なんかも綺麗にやりすぎなんかなーなんて。はみ出たニスを拭き取りすぎかなーなんて。

足りないのは下書きなしでクレヨンで絵を描いちゃうような感性というか、綺麗に丁寧にやるほど失われていく美しさというか。

(ちなみにこの”テリ”は塗っては乗り塗っては乗りを繰り返すと出てきます)

もちろんお客様のオーダーは綺麗に巻くよう努めますし、お代金いただくのに「わざと汚く巻く」なんてのは違和感です。皆が皆グラントイズムでバイクを組む必要もないのでそれでもいいと思うのですが・・・

おそらくグラントさんもこの手法を編み出してやり出した頃は、

きれいに図形的な感じで巻いていて(これ巻いたのMarkさんかもしれないけど)、これを見本として「綺麗に丁寧に」昇華してしまったのが今日のJapanの焼豚巻きなんだと思います。

が、グラントさん本人が昇華して行った方向はそっちではなくて、

最近のグラントさんのバイク。こんな感じで進化している・・レバー跨いでるやん、掌を乗せるし確かに。

右グリップに関してはもう、

ゴクリ・・・こんな感じで。

でもグラントさんの組むバイクは本当に不思議で、グリップだけフォーカスすれば奇抜に見えたりピチッとしていなくたって、

引きで見ると本当に美しい。もうなんか雲の上で本当に憧れます。(このCHEVIOTに関してはコットンバーテープではなくウールのフェルトを下地にしてやってる)僕も死ぬまでにこんな風になれるかな。

・・・とはいえ、流石にこの感じを全てのお客様が共感してくれるわけではないし、時に求められているものと違うということもわかります。この価値観で全てのお客様のRivendellを組むわけにいきません、そのオーナーのご希望をヒアリングしてご希望にお応えしますのでご安心ください。

でも僕個人のことを言えば心のどこかで「いつかグラントさんみたいなバイクを自然と組めるようになりたい!」って想いで組むので、葛藤というか、フツフツとシモの方から湧き上がる情熱にも似た性的衝動があるのも事実。
*RIVENDELL* frank jones Sr. (53)
これは僕のFrank Jones、自分のバイクで我慢せず全開でやっちゃいます。いいの自分のだから。

しかし、日々Rivendellを組ませていただいていると、稀にその価値観に共感してくれるお客さまが現れたりします。
*RIVENDELL* clem smith jr. (52)
この方の*RIVENDELL* clem smith jr.

パーツ決めのMTG中に、グラントさんのバイクの美しさや独特なグリップの話で意気投合して、盛り上がった末に、いつもの焼豚巻じゃなくって「グラントさんオマージュでいきたい」とご要望いただいて。

これが元になったグラントさんのバイク。違うことをやってグラントさんみたいにできる徳をまだ僕が積んでいないので、まずは真似でいいですか、、と弱気な僕。

下地に選んだグリップは樹脂製でカッチカチ、これだけだとオフロードで手が痛いです。

直感第六感でバーテープを巻きます。クッション性、グリップ感、だけでなく「薄目で俯瞰して足りないとこに絵の具をチョンチョン」なノリでテープを選びます。

おなじみ振動吸収最強のESIのグリップは半分にチョキン、

その上にまたバイブスを研ぎ澄まして飾りのバーテープ貼って、セイル糸でテープが剥がれないように、クッションがずれないように縛りあげたら、

セラックニスで補強。ニスは雨や汗に強くなるし、補強の意味もあります。

そして引きで見てみる。
*RIVENDELL* clem smith jr. (52)
・・・ここまでやるのは、名付けて「焼豚巻Lv.4〜」と言うことにしておきます・・

多分同じことをやりたい!という方はなかなかいないと思いますが、他の人があまりやっていないことや、グラント信者純度の高めの方はぜひLv.4〜でお申し付けくださいな。一緒に変なこと考えましょう。
*RIVENDELL* clem smith jr. (52)
自由に組んでいいのが自転車の楽しいところですが、グラントピーターセンという一人の人間へのファン心がオーナーさんと共鳴して、組み付けが楽しかったCLEMになりました。燃えるオーダーありがとうございました。

ーーーペンシルーーー

追記(長いですね、もう終わります)
Rivendellは納車前の新品状態よりも、乗り出して使われて汚れて傷付いたところが美しい、と思います。上記のCLEM、

納車後ピットインしていただいた時の姿がめちゃ格好良かったので写真を撮りました。

超素敵。

Rivendell、なかなか希望のフレームがいつでも用意できるメーカーではないですが、グリップ選びだけとってみても唯一無二でカルトな魅力がいっぱいです。

店頭に試乗車、展示車、販売可能なフレームがあることももちろんあるのでお店に見にきてください。

好きなメーカーの話は長くなる、最後まで読んでくれてありがとうございます。タニでした。