上馬店のタニです。

本日は前回の続きで、BLACK MOUNTAIN CYCLESのことを書きます。(なんぞや、という方は前編を是非読んでくださいね)

Golden Saddle Cycleryで組まれたバイクの写真から後編ブログを始めます。

カリフォルニアのバイクショップBLACK MOUNTAIN CYCLESのオーナーMike Varleyさんがデザインするフレームの魅力は、このMikeさんのことを知ることが一番と思いました。(グラントさんのBlahgを読み込むのと同じですね)

根掘り葉掘りインタビューをさせてもらったので、是非ビールを片手に読んでいただけたら幸いです。

Mikeさんとの会話やこのインタビューの端端から感じるナイスガイで信用できる人ということ、自転車への熱意や想いが伝わってきて最高です。僕らの憧れるアメリカンハンドメイドバイクと密接であることも。

ホイールを組みながら質問に優しげに答えてくれるMikeさんを脳内再生してお楽しみください。

《Mikeさんインタビュー》
>BLACK MOUNTAIN CYCLESのフレームを、お店で扱えることに皆興奮しています。
まず、BLACK MOUNTAIN CYCLESを始めたきっかけを教えてください。BLACK MOUNTAINを始める前のMikeさんのストーリーも知りたいです。

M「1993年から2007年までBMX, ATB, cruisers, Masi road bikesなどモデルのデザインやスペックを決める責任者product development managerとしてHaro Bicyclesで働いていました。」

M「毎年毎年新しくスペック、デザインを開発して新しい物を作っていく、そんなバイクインダストリーのやり方に疲れてしまい、このインダストリーを去る事にして色々な事があった結果、自分のフレームを作り自分のお店で売る、という状況に辿り着きました。」

M「そして、自分の好きな道を走れるバイク、Dirt RoadsやTrailsを走れるCross Bikeなど自分の乗りたいフレームをベースに気持ちよく乗れるナイスなスティールフレームを作る事を自分のゴールにしました。」

Black Mountainのインスタグラムより。Mikeさんの休日ライドから、どんな場所で生まれたフレームか想像が膨らむ。行ってみたい)

M「私の思う”自転車”の一番好きなところは、とてもシンプルだという事です。ただただ”楽しむ”だけの為に乗るところ、なのでStrava や GPSも一切使わないし携帯電話すら持っていません」

M「そして40年経ったって安心して乗れるフレームがいつも欲しいと思っています(今59歳なので40年経つと99歳なので30年でもいいです笑)」

M「なぜ”40年”という数字にこだわったかというと、Bruce Gordonが40年前の1981年に作った、普通のロードバイクよりも大きな700x30cタイヤクリアランスを持つ”Pink Bruce Gordon road bike”を今でもよく乗っていて、40年前に作られたこのバイクでのライドをいつもとても楽しんでいるからです」

(Mikeさんの宝物の”ピンク”ブルースゴードン。良いSteel Bikeは40年経っても乗れること、太いタイヤがもたらす乗り心地の良さの実証が、Mikeさん自身の作るバイクに大きな影響を与えたそう)

M「そしてこれもそのバイクの影響で、一番最初に自分でデザインしたBlack Mountain Cyclesのフレームも”タイヤクリアランス”をキーにデザインしようと決めました。一番最初に私が作ったフレームはもうすでにリタイヤしていますが700x35cがフィットするようデザインしました。今現在の代表的なモデル”Monstercross Frame”は最大50mm tiresがフィットします。大きなタイヤがフィットすればするほどライドの幅、場所、楽しみ方が増えると信じています」

(Rivendell、SURLYと同じポリシー、競争的で競技的な細いタイヤではなく、快適な太いタイヤのバイクをMikeさんは信じてる。それをはるか40年前にやっていたブルースゴードンって)

>「BLACK MOUNTAIN」という名前の由来は?
M「ヘッドチューブのデカールのデザインにもなってる”Black Mountain”は、象さんが横たわっているように見える為別名「Elephant Mountain」とも言われる山です。お店があるPt.Reyes Stationの東側に位置していて、私のショップの窓からいつでも覗くことが出来ます。
名前を考えていた時に友達にBlack Mountainはどうかと勧められて響きがよかったのでそれに決めました」

>バイクショップと、オリジナルのフレーム、どちらを先に作ることを思いついたのですか?
>そしてなぜ、オリジナルのバイクフレームを作ろうと思ったのですか?
>フレームをデザインする時、どんなこだわりがありますか?大事なことは何ですか?
(テンション上がり質問攻めしてしまった)

M「フレーム作りとショップはお互いを支えるために同時に始まりました。どちらかが欠けても成り立ちません」

M「Haro と Masiに居た14年間で沢山の違う形のフレームをデザイン、創作しましたがBlack Mountain Cycles framesが一から自分で初めて作ったフレームです。自分の好きな物を創作、制作出来てさらにそれを他の人達にも喜んでもらえる、欲しがってもらえる、というのはとても満足の出来る事だと思います」

>BLACK MOUNTAINのバイクを初めて見た時、カリフォルニアのハンドメイドバイクを見た時のような「格好いい!乗ってみたい!」という衝撃を受けました。そしてMikeさんの過去のブログを読んでいたら、「SOULCRAFT」「FALCONER」の二人のハンドメイドフレームビルダーの名前が出てきて納得しました。
(※BLACK MOUNTAINの過去のモデルでFALCONER製 made in USAのものがあったり、現行モデルも設計にSOULCRAFTのショーンが深く関わっている。↑のオレンジ色のバイクはFalconer製のMade in USA。)

>>この二人のフレームは僕らのお店でも扱っていて、僕が憧れるフレームビルダーです。それぞれ彼らとの関係やストーリーを知りたいです。ショーンとは昔からの仲??

M「SOULCRAFTのショーンとはビールを一緒に飲む最高の長年の友達です。ちょうど昨日もWHITE INDUSTRIESで会っていました笑」
(SOULCRAFTのショーンは現在フレーム制作をお休みしてWHITE INDのエンジニアとして活躍している)

M「もっと昔ショーンが働いていたSalsa Cyslesや80年代90年代のパーツを扱っている店でHaroで働き始める前に一緒に働いていた時があったのでもう彼とは30年の付き合いになります。」

(なぜか僕のPCに保存してあった大昔の写真。右からSOULCRAFTショーン、Mikeさん、SALSA創始者のロス。皆若い)

>BLACK MOUNTAINのバイクはいつも色、ペイントが素敵だと思います。色は毎回どうやって決めてるの?

M「カラーについてはいつも色々な色を探しています。
Haroに居た時多い時で150色分のフレームカラーをコーディネイトしないといけない、なんて事もありどのオーナーがどんな色のフレームを選ぶのか考えながらやっていた楽しい作業でした」



M「Black Mountain frameのカラーはいい色が揃っているビンテージの車(特に1960s VWとPorsche)を参考にする事が多いですが、時にはパントーンカラーブックをめくりながらパッと目についたバイクのフレームにピッタリだなと思う色を使う事もあります。」

M「もしくは、全く科学的ではなくてペインターに色指定をしないといけない締め切りのデッドラインが近づいたその時のフィーリングで決まることもあります笑」

>BLACK MOUNTAINの、どのモデルにしようか迷ってしまったお客さんに、選ぶアドバイスをください。
M「自分の作るバイクにはそれぞれのモデルごとに違いが出るように心がけています。」

M「”Monster Cross”はリムブレーキ。”MCD”は650bか700c wheelsのどちらでも使えるディスクブレーキ。新作の”La Cabra”は大きなタイアクリアランスを持つ全く違うタイプのモデルで自信作です」

M「買ってくれるお客さん達が”どこに乗りに行くのか”、もしかしたらその他に何か意見があるのか、何でも知りたいし聞きたいと思っています。たまに難しく考えずに一番好きな色のフレームを買うように伝える事もあります」

>最後に、日本でBLACK MOUNTAINを手に入れた自転車乗りと僕らにメッセージをください。

M「常にオープンマインドでいる事、それがフレームデザインやカラーのインスピレーションに繋がっていて自分の仕事人生、プライベートにおいても常に流れに任せて自然体でいる事を大切にしています。」

M「日本で自分が作ったバイクが走ることについて、ブルーラグの事は友達のフレームビルダー、SOULCRAFTやRetrotec、Falconerを通じて知っていたので自然と感じています。物事や人生はバイク作りやバイクを扱うのと同じ事です。無理やりやると壊れてしまいますが全て自然の流れに任せてやれば物事は自然に一体となって良い方向に長い間動き続けると信じています。」
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・・・以上です。もう1本ビールを開けよう。

めちゃ素敵な答えをいただいて、僕はさらにファンになりました。

カリフォルニアのハンドメイドバイクのように、乗る楽しみ走る楽しみ、朝つい選んでしまう、乗ってしまう魔力がまず第一にあって、その後から格好よさが滲んでくる感じ。

背伸びのないパーツで組んで、あとは乗って遊んで、汚れて砂埃かぶったら完成!みたいな。

・・・ここから蛇足、また僕個人の戯言も書きます。
BLUE LUGのスタッフはそれぞれ得意分野や好きなジャンル、バイクがあります。バラバラです。ピストが大好きで乗るのも組むのも得意なメカニックもいれば、SURLYを日本一愛する男もいるし、CRUSTを根っこから理解しようとするスタッフもいる。結構それぞれ。

なのでこれはブルーラグの総意でも上馬店の総意でもなくて、僕個人の極論なのですが、RIVENDELLとBLACK MOUNTAINがあれば平日と休日全てをフォローできて、そこに例外のハンドメイドバイクが加わって、この3つの柱で僕の自転車ライフは成立しちゃうんじゃなかろうか、と僕は割と本気で思っています。

まずはLA CABRA。バキバキ落ち枝踏んで、ゴロゴロガレ道やオフロードをぐんぐん探検できるバイクをお探しの方、候補に是非入れてください。

BLACK MOUNTAIN CYCLES、是非選択肢に入れていただけたら嬉しいです。

今回も長くなりました。
読んでくれてありがとうございます。タニでした。

↓「タニさんのブログは長い」とイジられたので、見やすくまとめた特集ページ作ってもらいました。こちらもどうぞ!