ひっさびさにパーツの話。
俺がおしゃべりして良いかな…、恐れ多い…と思っているこの由緒正しきブランドの話を。
CHRIS KING PRECISION COMPONENTS
(クリスキング・プレシジョン・コンポーネンツ。通称クリスキング。)
このブランドを紹介するにあたって絶対にこれだけは伝えたい。というか観て欲しい読み物があります。
Kingをめぐる冒険(下)/ ChrisKing
Chris King History: 苦労と尊敬と愛について
とにかくサークルズのこの記事が大好き過ぎて、何かに躓いたりした時に必ず観に来てしまう。
クリスキングという方(ブランド名=人名というのを今日初めて知った方も多いのでは?)
が70年代に自分の手で作りだしたヘッドパーツが全ての始まり。
パーツの歴史は人の歴史。それを思うと、
あなたのその自転車に何気なく付いているヘッドパーツやハブがまた愛おしく観えてくるのではないでしょうか。
そんなブランドのお話を。
さて、自分が最近手にしたCHRISKINGと言えば、
最近組み上げたSCAPE BOTに入れていたホイールなんですが、実はこのバイクを組むために用意していたんです…。
MASH HARD TAIL S SIZE
古より伝わりし1×1からこのバイクにステップアップ。体がびっくりしています。
今のマウンテンバイクってすっげぇ。このバイクの話はまた今度。
このMASH用にあまり馴染みの無い規格のヘッドセットを探していた時、
(最近のマウンテンバイクではよくある56mmゼロスタック)
たまたまハブも同色で手に入り、
CHRIS KINGづくしのバイクが出来上がったぜ…。いいね。と思っていた矢先、
リミテッドカラーのMIDNIGHT、続いて3D violetなんて渋い色が勢ぞろいしたのにはちょっと悔しさもありました。
MIDNIGHT入れて激渋なバイクも良かったかもなんて。
急にCHRIS KINGが身の回りに集まりだして、今一度この伝統的なブランドの紹介をしなければと思いPCに向かっています。
歴史や基本理念、テクニカルな部分に関しては、
前述した記事を参照して欲しいというか、あれ以上の価値ある情報を僕には伝えられそうにない。
では何を伝えれば?と脳みそひねって出てきたのは「自分のCHRIS KING遍歴」でした。
写真もない車体も多いので、その辺は読んでるあなたのイマジネーションでカバーお願いします。
しょっぱなから証拠写真が曖昧ですが、FIRSTクリスキングは2007年、まさかの競輪フレームでした。
(以下CHRISKINGをカタカナ表記とさせてください。)
というのもその当時、カーボンフォークを競輪バイクに装着したいと躍起になっていた私は、
フォーク側の下玉押しが強制的にイタリアン規格だった故に、
ヘッドパーツの交換を余儀なくされた経緯がありました。
(1インチヘッドパーツには2種類規格があって、競輪はJISでした。)
どうしてもいれたいんじゃ!!というパッションが、
あの日ハタチそこそこのクソガキだった私にクリスキングという選択肢を与えました。
(クリスキングの1inchのヘッドセットはイタリアン規格でした。)
今もgrip nutというモデルで販売されています。
昔はケイリンバイクに付けてたら渋いなと思っていたこれも、
rivやcrustの車体で未だに良く使います。
オーバーサイズもあり、最近だとブロンプトンでも装着率が増えました。
話は戻って、
装着した日、とてつもなく嬉しかった事を覚えています。
初めてのカーボンフォーク、2万円近くするヘッドパーツ。
フィーリングなどよりも、俺クリスキング付いてるぜ!!っていう満足感が僕を調子に乗らせます。
3日後に事故って廃車。1週間の入院。
退院後、警察署に取りに行った事故車の姿を見て崩れ落ちた記憶が蘇りました。
本当、セーフライドですよ皆さん。
それから時は経ちBLUELUGへ入社。実は入社後クリスキングのヘッドパーツを頑なに付けなかった自分がいました。
なぜかって?尖っていたからです。良いものは良いよりも、誰もつけていないパーツ、皆がそれなら俺はこれ。
そんなマインドに支配されていた自分はCANE CREEKをよりどころにしていました。
110年保証やベえぜとノーメンテでベアリングがグズグズになった110ヘッドパーツを使い倒した日々に終わりが来ます。
MAX氏から受け継いだ初代1×1。
これを組む為に某先輩が譲ってくれたのが赤いOS(オーバーサイズ、1 1/8インチサイズ)のヘッドと今は無きISOハブのセットでした。
世に出回るクロモリスポーツバイクフレームの大半はこの1 1/8インチの通称オーバーサイズ。
一番見慣れたクリスキングと言えばこのNOTHREAD SETなのでは。
そしてハブ、今まで持ったどんなハブよりも軽くて衝撃的でした。
これが…CHRISKING…。と大げさになるぐらいに。笑
突如向こうからやってきたクリスキングブーム。とはいえまだ輪界につま先をちょっと付けたくらいの若輩者の当時の私。
これを糧にクリスキングをもっと知ろうと、そのハブを分解してベアリングやリングドライブ(CHRIS KING独自のラチェット機構)をメンテナンス、
専用グリスを使わずにラチェットを調子悪くさせるなどの愚行も経て、1×1をいじり倒したのは良い思い出です。
おかげでその後来る数々のオーバーホールに臆することなく対応できたのはこの経験があったから。
そしてある日それはやってきます。PHILWOODのヘッドパーツが来航。
ハブはPHILWOODと決めていた当時の自分、その時に感じていた独特のヌルっとした回り心地はヘッドパーツでも健在でした。
(コレ何度も言っててアレですけど本当に体感できるのでPHILも良かったら。)
このPHILWOODのヘッドパーツが意外にもターニングポイントかも知れません。
入社して何年か過ぎ、今までに納車した方々のヘッドパーツやハブをオーバーホールする機会が増えました。
多くの使い古されたクリスキングを診てきましたが、どれもグリスがまだ残った滑らかな回り心地だったり、
ガタがあってもちゃんとセッティングし直せばまたスムーズに動く状態だったりと、
ベアリングの強さ、密閉性のすごさを改めて感じました。
特にハブに関しては、なんであんなに精密なパーツが沢山入っているのにこんなに軽いんだ?という驚きと、
ラチェットの機構のスムーズさが回転にこんなに影響するのかと、目から鱗が落ちる物体でした。
使わなくても持っておきたい。単純にプロダクトの出来だけで所有欲をくすぐられる名自転車パーツだと思います。
熱が入ってしまった。話を戻します。
質実剛健で独特の回転性のPHILWOOD、繊細故の堅牢さのCHRIS KING。
僕の中に二大ブランドの確固たるイメージが出来たタイミングでした。
それからというもの、接客の中でこの違いを伝える事でお客様のニーズに合わせれる術を得れた、
どんなバイクにどっちが良いのかを悩み選び伝える事でそのバイクへの説得力を増せたのではないかと思っています。
その後からは自分の自転車に使う事も多くなり、乗っていたロードには1inchスレッドレスのターコイズを。
はじめてのRIV、FRANK JONESには剛性強化を目論み1インチ2nutのチタンを。
初CRUSTだったDREAMERには、あの高級クランクをインストールするために初めてCHRIS KINGのBBを買ったな。
海水にさらされてもピンピンしてたのには驚いた。
(BBは24mmシャフト用、30mmシャフト用の用意の他、プレスフィットやスレッドフィットサイズもあります。様々な規格に対応出来る幅広さにも脱帽です。)
IFのトラックには渋い見た目をと思いオーセンティックな黒に白文字のBOLDを。
縁で迎え入れた2代目1×1にはオマケで付いていたマットターコイズをそのまま。
誰かから受け継いでも元気なまま健在なのはさすが。
LOWを生まれ変わらせようと選んだDROPSET2はインテグレーテッドフレーム専用の規格。マッチカラーがイケてるでしょとマットマンゴーを。
これからの良き相棒のミッドナイトスペシャルには組付け中の当時全然在庫が無かったINSET7(44mmヘッドチューブにはコレがフィットします。)
MATT SLATEは妥協した色だったけど、結果超気に入ってます。
そして今のMASH HARD TAILでNAVYのINSET2を…。初めて手にしたCHRIS KINGもNAVYだったので、一周した感があります。
思えば9個もCHRIS KINGを持っているのか。未だ壊れずに輝いています。
逸話と言って良いか分かりませんが、青い1×1は3年程実家の納屋でほったらかしにしていた時期がありました。
湿気、熱気、寒さ、直射日光、犬の毛猫の毛、ホコリにまみれて。
ヘッドとハブ、ちょっとダメになってるかなぁと思いながら持ち帰り触ってみると見事に何も変わっていない極上の状態のまま。
そういえば実家までの旅前にグリスアップしていった覚えが。メンテナンスを怠らなければ半永久的に使える事を身をもって知りました。
CHRIS KING。このパーツを付けたい理由は憧れと興味からだと思います。
メカニカルな事全然書けてないけど、持って損することは100%無いって自分は断言できます。
改めて思うのは、CHRIS KINGのパーツの価値は、未だ金額よりも価値があると思います。
これから組む愛車の為、それとも今の愛車をより良くする為、
どちらにしてもそれに乗り続ける限り、このブランドのそれらはあなたを色んな事で満足させてくれるはず。
お店で実際触って観てもらえたら。
chris kingと共に自転車の進化に対応出来た気がするし、成長させてもらったような、
振り返ってみるとそう感じました。
もう一度あの記事を読んで、残りの6月を突っ走ろうと思います。
それでは。