タイトル、そんなに内容盛り込んで平気かい?と心配されそうですが、
今回一つのジャンルを掘り下げるにあたってタイミングがばっちりだったので、もうガツンと書いちゃいます。
今回もそこそこ長いかも。覚悟してください。
街で見かける自転車で、何だあれは!?と異彩を放つモノってありますよね。
ファットバイクはその代名詞とも言えるのではないでしょうか。見た目の迫力に野郎心をくすぐられますし、
何よりそのエアボリュームゆえのフッカフカな乗り心地は一度乗ると中々クセになります。
こんな風に書いておきながら、実はBLUELUGの店頭で近年FATBIKEの完成車を置いてなかったし、
今現在スタッフが誰も乗っていないのは、はっきり言って東京という環境にはあまり利便性がないというのも包み隠さず言っておきます。
だけども、やっぱあのパンチあるルックスは一度で良いから乗ってみたい、所有してみたい。
オーバーなのに何でか後ろ髪引かれちゃう、そんなジャンルの自転車の歴史を書いていこうと思います。
(GOOGLEとWIKIPEDIAとDEEPLの力を借りてね。)
ファットバイクと聞いたら今の時代、こんなバイクを想像するかもしれません。
今でこそメジャーになったこんなサイズのタイヤの自転車、
個人的意見を言わせてもらうなら、大量消費社会とブームで、そのルックスだけがメジャーになってしまったFAT BIKEに、
実は様々な歴史があるという事を気にする人もあまり居ないでしょう。
そんなFATBIKEの劇的な普及と進化の過程に、SURLYが実は関わっていた、という事を今日は書きたいと思います。
まずこのジャンルの歴史が気になるところ、「FAT BIKE」とWIKIで検索すると真っ先に出てきたこの画像。
調べていくと「W.Ritchie」という曲芸乗りの人物が作ったとされています。定かではないですがなんと1924年の事だそう。
実用性よりかは目立つためのバイクとして作られたものが最初だったとは、回りまわって現代に通ずるものがあるかもしれません。
時は経ち1980年代、フランスの冒険家である「Jean naud」なる人物が砂漠地帯を旅する為に、
ロングテールファットツーリングバイク(!!)を製作し、アフリカ大陸ニジェールからアルジェリアの行程を成功させます。
というか後ろ二輪ではないか…??
この後も、ミシュランによるプロトタイプのファットタイヤを用いてサハラ砂漠の横断などもしたようで、
ファットタイヤにおける荒地での効果を実証した元祖の人物のようです。
もっと掘り下げて書きたいほどこの人物、バイクや装備が桁外れに興味深いんですが割愛。気になった方はぜひ調べてみてください。
どうやら著書もあるようです。フランス語読めませんが…。
80年代後半、アメリカ大陸の南北で同時にファットタイヤのムーブメントが動き始めます。
北はアラスカ。アンカレッジのとある自転車乗りは、この土地で冬でも走れるバイクが必要だと考え試行錯誤していました。
その名はIcycle bicycles。「Steve baker」という人物がキーマン。
「タイヤの接地面積を増やすのが正義なのでは?」と彼が思い付いたのはこんな方法。
リムを二つ三つ並べて溶接し、それにタイヤを履かせるという力業なこの方法は結構ローカルで流行り、
じわじわとこのムーブメントが広がることになります。
いっぽうで南のニューメキシコでは、砂漠地帯の旅に従来のMTBだとチョイきついな…と思っていた人たちが居ました。
「Ray Molina」という人物がリムとタイヤから作り始めて、それを入れる為のバイクをアラスカのWILDFIRE DESIGNS BICYCLESというハンドメイドバイクブランドに依頼した事でこの土地でもムーブメントが起こり始めます。
(上の写真のバイクがソレです。カッコイイ。)
メキシコのタイヤ工場と製作したと言われるそのタイヤは、なんと普通のMTBタイヤを縦に真っ二つにして、その間にまたゴムを溶かしてくっつけたモノだったそうです。こっちもとんでもない方法で実現したもんだ…。
それぞれの土地の環境下に適したものが、些細な邂逅を経て同時進行で動いているのがちょっとロマンを感じます。
DeSalvoも1999年にフレームの製作が依頼されていたり、だんだんとFATBIKEの認知度が高まっていた時に、SURLYのDAVEさんが登場します。
(ちなみに「FATBIKE」という言葉は、話に出てきたWILDFIRE DESIGNS BICYCLESの経営者、Mark Gronewaldさんが商標を取っているそう。)
FATBIKEのドキュメンタリー映像が出てきたのでコチラも是非観てみてください。
静かだけど着実に、北米エリアの楽しいサイクリスト達はFATBIKEに興味を惹かれていました。
このムーブメントはもっと広がってほしいと思ったSURLYが作ったのはLARGEMARGEというリムと、ENDOMORPHというタイヤ、
そして世界初となる量産FATBIKEフレームのPUGSLEYでした。
タイヤが太くなることで起きる弊害、それは特殊規格のパーツが必要、というものでした。
タイヤ、リムは当たり前としても、ハブなども専用でなければ組めないバイクが普及するのには時代が早すぎる。
その前にムーブメントが終わってしまうと感じたSURLYとDAVEさんが思い付いたフレームワークは世界をアッと言わせました。
フレーム自体がオフセットしている、初見ならば横から追突されたの?と見紛う特殊な形状でした。
当時のMTBでは主流だった135㎜幅のハブでファットタイヤホイールを普通に組むと、スプロケットの位置が内側に入り込んでしまい変速機が使用できないジレンマがありました。
多くのサイクリストにこのFATBIKEカルチャーを身近に感じてもらうためには、今ある規格で組むことが出来るFATBIKEフレームが良いじゃんとSURLYは考えたのです。
PUGSLEYの初のお披露目にはタイヤだけ間に合わなかったというアクシデントもあったようでしたが、
誰もが、「やってくれたなSURLY!!」と思ったことでしょう。
今までは一部のサイクリストにだけ認知されていたカルチャーが、より多くの人に知られるきっかけを作ったのがSURLYだったということです。
その後、FATBIKEのカルチャーは北米を中心に、主に寒冷地でのアクティビティや、世界を股にかけるツアラーのハードコアな層に支持され、様々なブランドもモデルも年々増えていきました。
そして広がるにつれて同時に起きたのは、それっぽいものが増える事と、パーツの規格が増えていった事。
ヴィジュアルでも魅力的だったFATBIKEは人知れず二分化していきます。
そして現在に至ります。あのタイヤの太さを履いているものは全て「ファットバイク」というブランド名のようになりました。
マジにファットバイクに夢を見た先人達が思う用途ではないものとして消費されている現実があります。
書きながら思ったのは、果たしてsurlyが見ていた未来はこれだったのかなという事。予想はしてたけど、あーそんな感じが強くなっちゃったかー…。とは思ってる気がします。
メジャーシーンにFATBIKEを持って来たSURLYの仕業という観点もあるから少しバツの悪さも感じてるかもしれません。笑
自分は好きを拗らせてしまった人間で、その車体を知りたくなってしまう性分ゆえに、
もう一度原点を深堀して、せめて身の回りの人に本筋のFATBIKEに興味を持ってもらえたり、魅力を再認識してもらえたら嬉しいなと思い今回この内容の話になりました。
あと実は、久しぶりにFATBIKEを組んだことでこのカルチャーに目を向けたくなったのも一つのきっかけ。
面白いフレームが入荷して、それにはFAT TIREが最高に輝くし、色んな人が興味を持ってくれると確信したので、
ガツンと組んで店頭完成車として幡ヶ谷店に置いてあります。僕が今提案したいFATBIKEはこんな感じ。
ってSURLYじゃないんかい!!ってツッコミが来そうですが、CRUST唯一の、ファットタイヤも使える車体です。
この、「ファットタイヤも使える」というのがミソです。
ホイールがコンパーチブルのフレームは今では珍しいモノではありませんが、ファットタイヤが使えるってのは自分の琴線に触れました。
SCAPEBOT改め SCAPE GOAT、27.5インチのタイヤなら2.8インチの太さが推奨とされているので、それだけでも充分過ぎるスペックなのですが、
3.8インチまで入るんだよ…。とフレームの説明に書いてあるなら試してみたくなる。
手始めに3.5インチのタイヤを履かしてみたもののまだ入る。もしやイケるのでは…、と「27.5×4inch」と書かれた商品に手を伸ばしてみたら、
うおおお、入ったぞ!!CRUSTが定めた規定値を0.2インチ上回ってはしまったものの、特に問題も無くフレームに収まりました。
(オフィシャルでもアナウンスされている通り、外装変速ではチェーンがタイヤに干渉してしまうので出来ません。)
久しぶりに乗ったFATタイヤは、うん、ずっしり!!(笑)タイヤが太すぎるんだからそりゃそうよ。
だけど前後輪とも空気圧を落として街中のギャップを超える時、そのフカフカ感は安心感と面白さを思い出させてくれました。
いつも行くトレイルでちょっと転がしてみたくなるぐらい、FUNなMTBとしてのポテンシャルがファットタイヤにした事でより見出せた。
登りはちょい辛いけど下りはニヤニヤしながら叫んで笑って走ってる自分がすっごい頭に浮かぶ。絶対楽しいじゃんこのバイク…。
いかん、想像するだけで楽しかった。「ファットタイヤも使える」の話が出来ていませんでしたね。
要するにこういう事。
「27.5インチのホイールで、リムが40㎜以上の幅の物を持っているなら、タイヤの履き替えだけでFAT BIKEになる。」
今まではFAT BIKEの為にフレームを買う。FAT BIKE専用車を買う。というのがハードルと感じていた人がいたかも知れません。
このフレームは、ある程度の制約(シングルギアか内装ハブ)とパーツ交換の手間がありますが、27.5ホイールでリム幅さえあればFAT BIKEにもなるんです。
それがこの現代において、すっげ―いいじゃんかよと胸が熱くなりました。
SURLYが様々な車種でチャレンジしてきた組み方の多様性を、こういう解釈でCRUSTがアンサーしているのかなと思ったら尚更熱いんです。
(このフレームも多分普通にマットさんの趣味なんですけどね。)
CRUSTのボス、マットさんもクロスチェックやロングホールトラッカーなどを経てCRUSTの物づくりをしているのを知っていると、
こういった仕様の幅広さに妙に納得できます。このCRUSTというブランドもまた、自転車に本気で向き合ってイカれた事を盛り込もうとしている。このフレームを触ってまた少しCRUSTを好きになりました。
一つのフレームの特定の部分での紹介になってバイクチェックかどうかも怪しいブログになってしまいましたが、
このバイクの多様性とバイブスが理解出来た人ならちょっと欲しくなったはず。
都会ではトゥーマッチ、でも、それでもかっこいいからで乗るのもアリだと思っています。
このバイクを理解してわざとFATBIKEと共に生活する姿勢も素敵です。
歴史を知って乗るのがかっこいいだけです。
それでは。