上馬店のタニです。

本日はRivendell自由研究シリーズです。

先日、弊社YouTubeディレクターのサブちゃんに呼び出されて撮影した動画。見ていただけましたでしょうか。

撮影中はテンパっているので、撮影後に色々「ああ言えば良かったかな」なんて思い出すのですが後の祭り。要するに「寸法と角度」次第で自転車は乗りやすくも乗りにくくもなります。その方法や理論は100人100色なのが厄介ですが、Rivendellのフィッティング、もしご興味あればぜひご相談くださいませ。

動画で調整した後のサブちゃんのPlatypus。これも見る人それぞれの嗜好ですが、とっても色気が出たと思うんです。
*RIVENDELL* platypus (55) Sabu's
バイクを組む時、バイクを横から見てどうこう、じゃなくて、乗る人間にあわせてどうこう、すると結果、横から見たときも美しくなる、というのが自論です。

イメージは「鶏つくね」です。

「手のひら」(乗る人)で「鶏つくね」(自転車)をムギュっと握って、パッと手を開いたときに”生まれた形状”、が「美しくて乗りやすい自転車ポジションである」という自論です。

鶏つくねがややこしかったら、紙粘土でもいいです。

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過去ブログや上記動画では、Rivendellの適正サイズの選び方(加えて快適なフィッティング)についてやーやー言ってきましたが、今日はその応用編「おっきめサイズのRivendellに乗るには」ということを書いてみます。

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まずは復習。Rivendellのフレームサイズの選び方は身長ではなく「PBH」という股下の長さでサイズを選ぶようになっています。

この動画のように、地面から恥骨までを測って、

各モデルに設定された「推奨PBH」↑ を見れば適正サイズが一目でわかる、という仕組みです。自分のPBHは暗記するか携帯のメモに入れておきましょう。
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しかし、
僕も含め我々日本民族が持ってしまう衝動、「大きい方が格好いいんじゃないか」「できれば大きめサイズに乗りたい」という気持ち。

めちゃくちゃ気持ちわかります、実際自分もA,HOMER HILSENの54.5サイズを買ってしまい失敗したことがあります(結果51サイズを買い直すという愚行)
*RIVENDELL* A. homer hilsen (54.5)
(数ヶ月しか乗らなかった大きい方のマイバイク。ハンドルは遠く、サドルから降りれば股間食い込むのが、乗れば乗るほどストレスになってしまい手放しました)

以降お客様にも後輩スタッフにも同じ失敗をして欲しくない、その想いから「PBHに合ったフレームサイズを選びましょう」を口癖に、PBH警察の所長に就任して現在に至ります。

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なーんて大袈裟に書きましたが、PBHはあくまで”手段”であって”目的”ではありません。

要するに、適正な推奨PBHのフレームを選べば、

①スタンドオーバーハイトが守れる

②適正なサドルハイトを作れる

③快適な位置にハンドルを仕込める

という「快適な自転車を組むための3箇条」を自然とクリアできるフレームサイズに辿り着ける、というのが目的です。
この3箇条を満たした自転車は、乗り降りから快適で、少ない力で前にスイスイ進んでくれて、結果バイクのルックスとバランスも良くなることに繋がります。

<3箇条おさらい>
①スタンドオーバー:自転車の跨ぎの高さでPBHより短い必要があります。ここをチョンボすると三角木馬、飛び降りた時に股間をクリティカル。実はこれが日々の「よっこらせ」に繋がりそれがストレスになっていきます。

②適正なサドルハイト:脚の長さに対し一番漕ぎやすくて楽に走れるサドルの高さがあります。合っていないと進む力が弱かったり坂道が辛かったり、膝や腰を壊すこともあります。

③快適なハンドル位置:サドルの高さ同様に、グリップが近すぎたり遠すぎたりすると乗りにくく、疲れてしまうバイクになります。

この3箇条を満たすフレームサイズを選ぶために 「推奨PBHを守らなければいけない」ということです。

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なぜ推奨PBHを守らなきゃいけないのか、のお話しをお店でする時に、言葉のあやとして「横からの見たときのルックスが〜」とか「シートポストの出代が〜」なんて言うこともあるのですが、本当はそんなにそれらは重要でなくて、あくまで「快適なバイクになるかどうか」それが目的です。ルックスは後からついてきます。

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おさらいおしまい。ここから応用編いきます。

上記の理論に逆に付け込んでいきます。

じゃあその「快適に自転車に乗れる3箇条」さえクリアできるなら、自転車はいくら大きくしてもいいのではないか?という発想。

キーワードは「ステップスルー」「ステップオーバー」です。

例えば、PBH85cmのグラントさんはAppaloosa の54サイズに乗りますが、

Cheviotは60サイズに乗っています。ポイントはどちらのバイクも「あの3箇条は守っている」ということ。

トップチューブが低いステップスルー形状のフレームは、3箇条の①スタンドオーバーハイトの縛りを無視することができるので、大きなサイズを選べる可能性があることがわかります。

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自分を被験体にしてみます。僕は身長:173cm/PBH:83cm、サドルハイト70cmです。

愛車Appaloosaは51サイズ。

僕は一つ上の54サイズのAppaloosaに乗ることはできませんが、

PLATYPUSなら55サイズに乗ることができます。

2台を全く同じサドルの高さ、グリップまでの距離にセッティングにしてみました。

サイズ51→55と縦パイプは4cmも違いますが、無事サドルハイト70cmも作れて、3箇条オールクリアー。とても快適です。
PLATYやCLEMやGALLOPなどの「ステップスルー」形状のモデルだったら憧れの大きなサイズに乗ることができるわけです。

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また、これは身長に対してPBHが短い方にもとっても有効です。
背が高いけど足が短い人がダイアモンド型のフレームを「推奨PBH」通りで選ぶと、快適なバイクにはなりますが、ステムを130mmにしなきゃいけなかったり、モデルによってはBOSCO BARだとグリップが近すぎて、選べるハンドルが限られてしまったり。
ステップスルー系フレームなら快適3箇条を満たしつつ、バイクのルックスも良くて選べるハンドルも多くなります。
身長に対してPBHが短い方は、ぜひステップスルー系フレームを候補に入れてみてください。

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さて、ここからが今回の自由研究のミソです。

上記の「ステップスルーとダイアモンド型での選べるサイズの違い」で、PLATYPUSなら55にサイズアップできた僕ですが、その上の60サイズは果たして乗れるんでしょうか?

答えはNo。

限界までシートポストを差し込んでも、サドルハイトは72cmより低くすることは出来ないので、適正サドル70cmの僕は乗ることができません。

・・・ここから応用を超えて裏技編に突入します。

上記のように「シートポストを限界まで差し込む」と、

「フレームサイズ+12cmでそのフレームのミニマムサドルハイト」

を計算できることがわかります(サドルはBROOKSの場合)。60サイズのPlatyなら72cmがミニマム。

つまり逆算で、僕の適正サドルハイト70cmから12cm引くと、「70-12=58」→「58サイズ」のフレームまで適正サドルハイトを作れることになります。

え待って、俺「58サイズ」乗れるの?? 悪魔が耳元で囁いてきます。

もちろん58サイズのダイアモンド型フレームでは、快適3箇条の①スタンドオーバーハイトがクリアできるわけないので乗れません。

そこに先述の「ステップスルーフレームに限る理論」を加えて煮込みます。

・・・そしたら流石グラントさん、既に実験されてらっしゃいました。

Grant’s 64cm Clem L – 85cm PBH

脅威の64サイズチョイス、、

サドルを限界まで差し込んで「いつもの自分の適正サドルハイト」がちゃんと作れることを確認(3箇条②クリアー)

このくらい差し込んでいます。

短めステムを深く差し込んで、たっぷりスイープバックのTosco Barでグリップまでの距離も確認、快適な位置にハンドルがくるかを確認します(3箇条③クリアー)

そしてもちろん、

ステップスルー形状なので跨ぎの高さ、スタンドオーバーハイトのジレンマは元々ありません(快適3箇条オールクリアー)。

ブログの冒頭で「PBH厳守!PBH警察だ!」と書いてたくせに支離滅裂ですが、

「推奨PBHの目的である ”快適な自転車の条件” を全て満たしている”推奨PBHを守れていないバイク”」

の爆誕です。

自転車サイジングにおけるシステムの隙間を縫ったバグのようなバイク。これを「MAXED OUT SIZING(マクスドアウトサイジング)」と呼称することにします。

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そーんなまた、設計者グラントさんだから手を出せるような裏技なんでしょう?都市伝説に近いものなんじゃないの?と思うじゃないですか、この裏技を嗅ぎつけ、悪魔と契約したお客様は日本にも数人いるんです。
*RIVENDELL* charlie h. gallop (61)
Charlie H.Gallop 61size / サドルハイト75cm PBH87cm

*RIVENDELL* clem smith jr. (59)
Clem Smith Jr. 59size / サドルハイト71cm PBH83cm

どちらも、普通にPBHから割り出したサイズより大きいフレームです。ですがスタンドオーバーハイトもサドルの高さもハンドルまでの距離も、「快適3箇条」をすべて満たしています。
*RIVENDELL*charlie h. gallop (61)
皆さん変態だなあ。そしてグラントさんのこと好きだなあ。組み付けるのも最高に楽しい2台でした。
*RIVENDELL* clem smith jr. (59)
そして乗り味。

フレームがたわんで滑らかに地面の凸凹を吸い取ってくれるような、

「カヌーやボートやサーフィンやスケートボードやスキー板と同じように、自転車も長い方が安定して乗り味の良いものになる」

グラントさんの言葉が脳内再生。

弊社カメラマンのサプライが、納車前の撮影で上記のGallopに乗って帰ってきた時、
「????なんかデカイのに乗れちゃうし快適、なんで???」
と困惑していました。

へっへっへそれが「MAXED OUT SIZING(マクスドアウトサイジング)」だぜ、と心の中で僕はつぶやくのです。

そしてダイアモンド型フレームでは成り立たないシートポストの出代、このルックスも、
*RIVENDELL*charlie h. gallop (61)
オルタナティブでとっても美しく見えてくる。最新版グラントピーターセンの理論を動脈にダイレクト注入。

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あなたも眠れない夜に、自分のサドルハイトから12cm引き算して、該当フレームが存在するのかを調べたくなっちゃうかもしれません。

僕だったら、57サイズのCharlieがドンピシャなことに気づいて興奮してきました。組みたい、乗ってみたい、ハアハア、サドルハイト70cmの誰か一緒に悪魔と契約しませんか。

オルタナティブだけど快適な裏技「MAXED OUT SIZING」。ご興味ある方はぜひご相談くださいませ。

さあお手を、祭壇へ

長々と読んでくれた方ありがとうございます、自由研究でした。