上馬店のタニです。
一昨年、2023年のMADE BIKE SHOWのこと。
僕が一番会いたかったFALCONER CYCLESのビルダー、キャメロン=ファルコナーには会えませんでした。オートバイで怪我をしてしまったそうでブース出展がありませんでした(MTBも超上手いキャメロンだけど、モトクロスバイクでのツーリングも大好きなんだって)
VIA:mountainflyer magazine/California Travis
なんで会いたかったというと、もちろん彼の作るバイクの大ファンだからというのもあるけど、もう一つの目的は、次のバイクのオーダーを直接彼に相談したかった。
それは叶わなかったけど、会えなかったことで逆に決心がカチーンと固まり、日本に帰ってすぐにメールをしたのでした。
「ちょいと企んでいることがあるので聞いて欲しい」と。
それから1年弱が経ち、彼のインスタグラムに投稿が。サラサラの鼻血が出た。
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ででで出来上がっている、、キャメロン曰く、
「FAT TIREのストリートトラックフレーム6台が日本へ。」
「これらは35mmタイヤに適合し、Paul ComponentのRacer Medium Brake用の直付けポストがある。
「All Track Bike? Monster Track Bike?? わからない…」
「最後の写真はドロップアウトのディテールで、パラゴンのトラックドロップをひっくり返して、フランジを少し加工してある」
企みが無事に形を成して、この世にあるわけないものが爆誕する瞬間。ハンドメイドバイクオーダー沸点の一つ。自分がオーダーしたバイクをキャメロンがどういう言葉で評するかも興味があった。「オールトラック」、しっくりきた。
オーダーしたバイクはTRACK BIKE、ピスト。
このエンド。天才なのか。(元の形状はコチラ、ありもののエンドをそのまま使うんじゃなくて、機能と美意識のもとに手を入れてある)
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とはいえオーダー前は、過去FALCONER作のTRACK BIKEってあまり見たことはなく(確かKING COGのスタッフが乗っていたような)アメリカ中の大自然や、自分の工房の裏のトレイルをオフロードバイクでいつも走り回っているイメージだし、いくらサンフランシスコのローカルに根付くレジェンドビルダーとはいえ「ピスト」作ってくれるのかな?確信ありませんでした。
なのでダメ元で、キャメロン本人に会って直接聞いてようと思ったわけです。
結果、会えなかったので吹っ切れた。帰国後メールで聞いてみたところ『Sure!』の即答。作れるんかい!嬉しすぎる。
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そしてオーダー当初、時同じくして僕が過去何台かバイクの組み付けを担当させていただいている常連様達の中で、MASH STEEL以降トラックバイク熱が上がっていた。
このプロジェクトの話で盛り上がり「同じバイクをオーダーしよう!人生は一回じゃないか!」と僕含めて3人でオーダーに踏み切りました。
ビルダーさんの手間・負担を減らすために同じフレームをプラス3本で6本のオーダー。うち3本はお店のストックフレームとして。
(※追記、ブログをアップする前に店頭でみつけてしまったお客様たちに3本ともSOLD。変態のお客様に支えられて誇らしいです)
これが僕の個体。色はランバ・ラルBlueと名付けました。
FALCONERのペイントはチープな粉体塗装(パウダーペイント)。自転車以外も塗ってる塗装業者のサンプルの中から選びます。普段ブルーラグで扱っているフレームやCOOK PAINTの溶剤塗装(リキッドペイント)より粗野で語弊のある言い方するとある意味粗悪。
でもFALCONERやHUNTERなどソッチ系のビルダーさんのバイクに限っては、それが良い。ぽってりした柚子肌の質感、なんて言葉も余計なのか。
ペイントは錆止め、くらいにしか思ってない、こだわってない、ところがこだわりなんじゃないかと思う。「道具感」。
ロゴもビニールデカールを上からペッと貼ってクリアコートは無し。
デカールが剥がれても気にしないし、気になったら貼り直せばいいし、傷だらけになっても様になるし、むしろピカピカだとダサいこの感じ。早く乗りまくってボロボロにしたい、積み重ねたい。
例のトラックエンド。「見た目は機能のあとから付いてくる」なんて信条のビルダーさんなんだけど、15mmスパナの掛けやすさと共存するこの強烈な美意識、堪らなく大好きです。
シートステーの接合部も然り。昔「このシートステーが好きなんだ!」ってキャメロンに伝えたら「My Original..」って少し照れくさそうに嬉しそうにしてたのを思い出す。
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本当はこれの色違いのストックフレーム3本をご紹介するブログだったけどすでにSOLDなので、未来FALCONERオーダーをご検討してくれるお客様が現れることを祈って、このまま僕のグフのビルドチェックにお付き合いください。
こんな風に組みました。
自分にとって、自転車人生の原点であるトラックバイク。ピストがなかったら自転車を好きにもなっていないし、自転車屋にもなっていないです。
でも歳をとって自転車の乗り方、付き合い方、趣味嗜好もずいぶん変わっていった。もう乗ることもないと思ってたけど、MASH STEELのおかげで自分が乗ることもわかったしまだ楽しめることもわかりました。
なので僕にとって、人生最後(になるかもしれない)のトラックバイクってなんだろう??って夜な夜なビールを飲みながら考えた結果、酩酊の先に見えた答えは「一番好きなビルダーさんに作ってもらおう」でした。
そこから具体的に考えて、キャメロンに伝えていきます。
「トラックレーサーじゃなくて日々の乗り物」
「東京は前後ブレーキ付けなきゃいけないから格好良くブレーキがつくように、ブレーキありきで成立するデザインにして欲しい」
「タイヤはちょい太めが履きたいかも、PAULのRACER BRAKEが余ってるから使えるかな?」
なんて希望を伝えていったら、
「じゃあブレーキはPAULのセンタープルをフレームにブレイズオン(直付け)でやってあげようか?」なんてアツい提案が。
目から鱗のタマらない提案だったし、ビルダー自身がソソる要素な気がしたので快諾。
そして「その他デザイン、ディテールは全てキャメロンに任せるよ」と全幅の信頼を添えて。結果直付けにするとカッチリしたタッチとRACER BRAKE唯一の弱点「調整の時に台座ごと傾いてしまう」のストレスから解放されました。
タイヤは太めを履けるように、っていうのは昔長年乗った愛するSTEAMROLLERが心の奥底にいるからだと思う。フロントは34CのWTB、リアはズリズリ削っても罪悪感のない安いもので35cにしました。長年Rivendellやオフロードバイクに乗りすぎて細いタイヤに乗れなくなってしまった。
(途中チェーンステー曲げの天才でもあるキャメロンから「なんなら50cまで履けるようにしてあげようか?笑」なんて提案があったけど怖くなってやめた)
ホイールもSTEAMROLLER→MASH STEELと載せ替えて使ってきたPHILWOODxMAVIC。本当にPHILハブは一生使えるんだな、と実感します(13年目突入)。ベアリングの打ち替えは過去一度だけ。
ギア比はトミーやブルーラグのヤングたちに笑われてしまうくらい軽め(2.47くらい笑)。「実際乗って快適に自分が感じるところ」に落とし込むのはRivendellに教わりました。
チェーンリングはディングル2枚歯にしてあって、パッとギア比を変えれるようにしてあります。
XTRのクランクアームも歴代バイクからの載せ替えだけど、ぶっちゃけチェーンライン出てなくて、インナーの位置からさらにスペーサーで内側に4mmオフセットさせてあります。
一瞬きも目な脱線で、これは言わないほうが格好いいし言うとキャメロンからも気持ち悪がられるだろうから本人には言わないんだけど、よく聞かれるので書くと、
このXTRクランクにこのチネリのウニカサドルの組み合わせっていうのは、
このプロトタイプのスワンパーが心の奥底にあって、フレームはもちろん組み方も最高に格好良くてずっと大切にしてた写真なのだけど、このレースでこれに乗っていたのが実はキャメロンだったよう(もしかしたらビルダーになる前??)。
後にその人に自分のフレームを作ってもらうなんて想像もしていなかった。
で、誰が乗っているかわからなかった時に、ZOやBARRY MCGEEの世代が当時「お尻が痛くなりにくい」って理由でウニカの穴あきBMXモデルをビンテージロードレーサーやトラックバイク、配達バイクに好んで使う、って言うのを聞いたことがあって(実際は結構お尻痛いので注意)、
この辺の時代のことは多分うちの社長やアゼミさんが知ってるかも?あのスワンパーの持ち主もZOやその世代の影響でウニカ使ってる人のかなぁ、その脈々な感じかっけーなぁなんて当時は妄想してて。
そして、後のZOの新しいバイクはFALCONER製だったりして。10年越しのいろんな点と点と点が線になっていって。
なので、このTRACKになんでチネリ?なんでXTRにWTB?って違和感を指摘されることがあるけど(言い訳しときたい)僕の中ではとっても自然な、ある意味グループセットみたいな感覚なんです。
ハンドルはBTCHN。ロゴは剥がす派。ビルダー同士、タイラーとキャメロンの関係性からこのハンドル以外考えられなかった。(はて?と言う方はこの動画46:45あたりからBTCHNビルダーのタイラーのインタビューを是非)
そんな繋がり気にしなくてもクランプ径が合えばハンドルはくっつきますが、重量や精度のことよりそんなことを考えながら自転車を組むのは楽しいです。
グリップはもちろんOURY。OURYにデカ目のバーエンドをぶっさすのにハマっている。
どうしても使いたかったこのハンドルの弊害もあって、このハンドルで好みの高さにするためにはフロントブレーキのケーブルハンガーが入るスペースがなくなってしまったので、
このBOXCAR STEMドリリングに行きつきました。(これはお客様のバイクではやりません。折れてもおかしくないのでやらないでください)
うーん、ライズなしのフラットバーにすれば良かったのかな、と昨日は思っていたかもしれませんが、しばらくこれでいいです。
その他、当時オープンしたてのSIESTAで買ったFREGHTのドリンクホルダーや、
当時どうしてもプラスチックペダルが嫌で、MKSのMT-LITEが実はHOLD-FASTをつけれるアイデアはたしか名古屋を走るレジェンドメッセンジャーさんのHUNTERから見て学んだっけな、とか、
当時はどうやってワイヤーを通したら良いか難儀していたのシートクランプ付近のケーブル通しの仕様がまさか自分のバイクにくるとは・・とか。
自転車に乗ってからあっという間に過ぎ去った自分の15年間の色々が詰まったバイクになったな、と酔っていた時は勘違いしていたんですが、すでに色々カスタムしたくなってしまう。
ピストは乗るのもいじるのも楽しいですね。乗っては変えての繰り返される諸行は無常。
これと同じフレームを新たにキャメロンにオーダーすることもできますし、あなただけのバイクをオーダーすることもできます。ショートリーチブレーキで28mmタイヤにしても良いし、PAULのWORD HUBを使って50mm以上のタイヤが入る真のモンスタートラックだって。いやいや小径で・・なんてことももちろんビルダーさんにぶつければ良い。敢えて、今一番乗っているバイクから載せ替えて、”自分のためだけにチューニングされた究極(ALEX)”を手に入れることもできます。
ハンドメイドバイク、少しでもご興味を持っていただけたら幸いです。何事もまずは妄想から、なのでその種になれたら嬉しい、昔僕が読んでた先人たちのブログのように。オーダーのご相談未満の雑談でもお店でお話しましょう。FALCONER以外のビルダーさんを紹介することもできます。
最後まで読んでくれた方ありがとうございます。ランバラルでした。